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人工知能(AI)が中国の自動車産業を発展させる大きな力となりつつある。大手メーカーは自動運転やスマートコックピットのコンセプトをアピールするだけでなく、実際にAI技術を導入することで競い合っている。
電気自動車(EV)メーカーの小鵬汽車(Xpeng Motors)の何小鵬会長は、向こう10年間でAIをコア技術とする世界的なテック企業になることを目指すと発表した。蔚来汽車(NIO)の李斌CEOは、スマートEVメーカーとして成功するには、まずは優れたAI開発企業でなければならないと強調。理想汽車(Li Auto)の李想会長も、今後3~5年において、AIが業界を根本的に変える最も重要な要素になるとの見方を示している。
AIの活用シーンとして最も注目されているのは自動運転分野で、その技術は急速に進歩している。
理想汽車は、エンド・ツー・エンド(E2E)モデルと視覚言語モデル(VLM)を組み合わせたシステムで運転支援機能を強化する次世代の自動運転技術ソリューションを発表した。2024年11月末には、車載システムがOTA(Over the Air)によってバージョン6.5にアップデートされ、出発地から目的地までの高度な運転支援といった複数の新しい機能が導入されている。
AIチップ「図霊(Turing)」を独自に開発した小鵬汽車は、自動運転用ソフトウエアとE2Eモデルを使って、出発地から目的地までの高度な運転支援機能を中国で初めて実現した。この機能は、同社の車載OS「天璣」バージョン5.5.0で使えるようになるという。
自動運転技術が徐々に高度化していく中、複雑なシーンをいち早くシームレスにカバーできたメーカーが、優位に立つことになる。
スマートコックピットもAI活用の主戦場になりつつある。例えば、従来の音声操作では決められた指示しか入力できなかったが、AIモデルは人のような自然言語処理を可能にした。ユーザーは、音声だけでなくマルチモーダルな情報のやり取りによって、思い通りにコックピットを操作できる。また、AIモデルは複数のタスクを同時にこなし、目的地に着くまでの走行ルートやお薦めのレストラン、利用する車内エンターテイメントなどユーザー好みのプランをワンタップで作成することも可能だ。
AIアシスタント「理想同学」を搭載している理想汽車は、ユーザーがスマートコックピットを使いやすく設定できる機能「任務大師」をバージョン2.0にアップデート、検出と推論が可能になり、ユーザーの指示に基づいて専用アプリを自動生成できるようになった。
単純な機能の集合体だったコックピットはAIの搭載により、ユーザーを理解し、シーンに応じて主体的にサービスを提供するパートナーへと変わりつつある。これからは、より心が通うようなやり取りをどう実現するかが競争のポイントになるだろう。
自動車はソフトウエア定義からAI定義へ
AI技術の急速な進歩と普及によって、自動車業界は新たなステージに入っている。自動車は「ソフトウエア定義(SDV)」から「AI定義」に向かって進化しているというのが業界の共通認識になってきた。この進化は、技術的な枠組みをアップグレードするだけでなく、自動車の開発手法やアプリケーション、ユーザー体験を全面的に再構築するものだ。
ソフトウエア定義とAI定義の大きな違いとして以下の3つがある。
開発手法:ソフトウエア定義の自動車では、多くのエンジニアが必要で、センサーや意思決定、制御などの機能を担うモジュールごとにそれぞれアルゴリズムを設計し、膨大な走行テストと改良を繰り返さなければならない。また、システムが複雑なため、データの収集からアノテーション、学習、展開(デプロイ)を繰り返す「データ閉ループ」の効率に限界があった。一方、AI定義はAIモデルを中心にしており、クラウドでデータの学習やシミュレーション、検証を進めることで、自動的に改良を加えることができ、開発プロセスやハードウエアを簡略化できる。
データ主導と改良効率:ソフトウエア定義ではデータの閉ループに人の関与とインフラが必要で、コーナーケースの検出機能を向上させるために膨大な量の走行テストを実施する必要があった。AI定義なら、クラウドでのミュレーションとエンド・ツー・エンドモデルによる自動のデータ閉ループによって、車両がコーナーケースに遭遇するとすぐにデータが転送され、AIモデルが自動的に学習とアップデートを進める。
展開・アップデート方法:ソフトウエア定義では、主にOTAによって車載システムをアップデートし、システムコードを修正していく。厳しいコンプライアンス要件を満たす方法ではあるものの、プロセスが複雑で、更新サイクルが長い。AI定義なら、AIモデルのアップデートが中心となるため、データの検証や展開のプロセスが簡略化され、車載装置への依存を減らしながら、柔軟で効率的に車載システムをバージョンアップできる。
つまり、エンジニア主導からAI主導に変わったのがAI定義の自動車だ。
メーカーはAI定義の自動車を開発するために、技術を大きく向上させるだけでなく、資金やリソースの壁も乗り越えなければならない。演算能力、アルゴリズム、データの閉ループの3つは不可欠な要素だ。極越汽車(Jiyue Auto)の夏一平CEOは「500億元(約1兆円)を投じなければまともな自動運転車は開発できない。わずか数十億元(数百億円超)で造った自動運転車は『走る凶器』にしかならない」と話した。つまり、自動運転分野で主導権を握るには、巨額の資金を投じることに加えて、継続的に技術を向上させ、効率的なデータの閉ループを構築する必要があるということだ。
AI主導の技術進歩に伴って、先行するメーカーと後を追うメーカーの差はますます明確になるだろう。
作者:極客公園(WeChat公式ID:geekpark)、周永亮
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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